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マルチプル法(3)

マルチプル法による企業価値算出の手順について、説明いたします。

手順1:類似企業(上場会社)の選定
手順2:類似会社の直近決算期の財務情報を取得
手順3:手順2からマルチプルデータを取得(EBITDA倍率、PBR、PSRなど)
手順4:マルチプル(倍率)を対象会社のデータに適用
手順5:マルチプル法による企業価値を算出

<手順1類似企業(上場会社)の選定>

 対象会社の事業内容、事業構成、資本構成などから、上場会社から複数(少なくとも5社以上)の類似企業を選定します。

 対象会社とぴったりと条件が一致する上場会社が見つかることはまずありません。

 したがって、どの会社を類似会社とするかはかなり悩ましいところだと思います。

 例えば、上場会社は事業規模が大きく、多様な事業を複数行っていることが多いですが、一方で大半の未上場企業は、事業規模・事業の種類も比較的小さいため、評価対象企業と、すべてが一致することなどないでしょう。

 
 それでは、どのように類似会社を選定すればよいでしょうか。

 まず一つに、対象企業の競合他社とよばれる上場会社を類似会社として選定することです。

 対象会社の競合他社であるため、対象会社と同様な事業を行っているはずです。

 そして、算出者以外の第三者から類似会社として認識されやすいでしょう。

 しかしながら、事業規模が違いすぎたり、多種多様な事業を行っている企業を類似会社として選定すると、評価額もかなり影響を受けます。そのため、類似企業の中でもある程度ルールを決めておくことが必要でしょう。例えば、売上規模が●●億円以下とか、資産規模が対象会社と同等レベルであるなど、客観的に類似であると判断ができるものを条件としてあげておくと説得性があがると思います。

 ただし、上記の選定方法でも、恣意的な部分は排除できません。

 そこで二つ目の選定方法として、対象企業と同業種・同レベルの売上規模の上場会社をすべて類似企業としてあげるという方法です。
 
 類似企業の中には事業内容、事業構成が対象企業と一致しない企業が出てきますが、恣意的な部分は排除され、ある程度納得される選定方法です。
 (しかしながら、類似会社の数は多くなるので、算出にも時間がかかりますが。。)

 
 結局のところ、算出する方以外の第三者が、類似会社として選定した会社を類似会社であるということを第三者に納得してもらう必要があるので、その第三者(算出結果の報告先)の考えやその方々の背景・文化なども考慮に入れた上で、選定することが大切となります。

<手順2:類似会社の直近決算期の財務情報を取得>

 手順1で類似会社として選定した数社の直近の財務諸表を入手します。

 ここでは、類似会社の損益計算書と貸借対象表があればいいでしょう。

 類似会社は上場企業であるため、財務情報の情報は入手しやすいです。

 入手の仕方は、

    ・類似会社のHPにアクセスして決算短信等のIR資料を入手

    ・EDINETで有価証券報告書を入手
   
    ・金融関連の会社から入手
   
 などから、決算短信や有価証券報告書、その他決算発表資料などを入手するといいでしょう。
   

 
<手順3:手順2からマルチプルデータを取得(EBITDA倍率、PBR、PSRなど)>

 手順2で取得した財務情報から、具体的に類似会社の倍率を求めます。

 入手できたデータや対象会社の財務情報の開示状況によりますが、いくつか代表的な指標を紹介いたします。

   EBITDA倍率
   PBR
   PER
   PSR
   EBIT倍率
   EV/営業利益
   当期利益/EV
   経常利益/EV

   ※EV(Enterprise Value;企業価値)

 使用する株価は、直近の終値を使用する場合と、一定の期間における平均株価を使用する場合があります。

 例えば、その類似会社の株価が上がり調子であれば、期間を短くした平均株価(例えば3ヶ月)を使用すれば、期間を長く取った平均株価よりも高くなりますし、逆に下がり調子であればその逆にもなりますので、どの株価を使用するかによって、評価額にも影響が出てきます。

 したがって、どの株価を使用するかについても、結局のところ算出した企業価値の報告先の方々とのコミュニケーションをよくとって対処することが必要でしょう。
  

 あと、比較対象数値の年度はあわせることが大事です。

 EBITと営業利益の年度が違えば比較できなくなりますので。。。

 当然ながら、対象会社の数値も年度をあわせることが必要です。

<手順4:マルチプル(倍率)を対象会社のデータに適用>

 手順3で類似会社のマルチプルデータを求めました。同様に対象会社についても財務指標を準備します。

 対象会社のP/L、B/Sからマルチプルデータに適用できる指標を事前にEXCEL等の表計算ソフトに入力しておくとよいでしょう。

 基本的な指標としては、代表的な以下の数値を準備してください。

  ・売上高
  ・売上総利益
  ・営業利益
  ・EBIT
  ・EBITDA
  ・純資産額
  ・有利子負債額
  ・現預金

例として、EBITDA倍率で見ていくことにしましょう。

<類似会社データ>

 EBITDA:10億円
 時価総額:100億円
 有利子負債:20億円
 現預金残高:5億円

 EV=100億円+20億円-5億円=115億円
 
 EBITDA倍率=EV÷EBITDA=11.5倍 

 ※ここでは、EV=時価総額+有利子負債-現預金とした。 

<対象会社データ>
 
 EBITDA:2億円
 有利子負債:0円
 現預金残高:0.5億円

話を簡単するため、類似会社は1社とし、上記のデータとしたとき、対象会社の企業価値は、

 対象会社の企業価値=対象会社・EBITDA×類似会社・EBITDA倍率-有利子負債
                +対象会社・現預金

              =2億円×11.5倍-0円+0.5億円=23.5億円

と言う手順で算出します。

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